大会前日講習会では黒郷先生の通訳を担当して、四〜六段のグループで勉強させて頂きました。「皆はどんな杖道が好き?」という最初の質問が、とても印象的でした。今回のドイツ選手権で一番大事な部分だったと思います。それがどの程度私の通訳で皆に伝わったかは分かりませんが…(汗)
大会一週間前から私はずっと昨年の全日本杖道大会決勝戦の動画を繰り返し見て研究していました。以前安丸先生から正しい構えじゃないと、正しい技は出来ないと教わり、そして構えは素早くというのをアンディ先生からも指導されました。一人稽古の際はその点に注意して稽古していたつもりでしたが、あることにやっと気が付きました。
ある程度上手になった海外のみんなは、全体の傾向として力強く、そして勢い良く、出来るだけ流れを途切らせないように、とにかく速く演武をしようとする方が多数居ます。実際に、大会では私の対戦相手はさっさと演武終了する場合が多かったです。
私には焦っているように見えるし、速さで誤摩化しているようにも見えます。彼らの打太刀をしていると、技のかかりが浅かったり、小さかったり、打太刀を無視して先を急いでいるようにしか見えないことも多々ありました。足の向きと手の幅だけ気にしても、他が非常に雑です。後日連続写真で見返しながら、やっぱり所々中途半端になっているのが目に留まりました。私も大会では緊張したりして失敗をよくするので、他人のことは自分のことと思って反省しています。
中段者と高段者の一番分かりやすい違いは、常に勝っている様子だと思います。でも、なんで常に勝っているのだと、どうして自分はそう思うんだろう?って考えたことあるかな。姿勢とか気勢とか、それだけじゃなくて、全体の流れを見ても全く違う動きをしているのが、何十回と繰り返して見ていると理解出来るようになりました。
逆に常に負けてるのって、打太刀が次の準備出来たときに、まだ仕杖が準備出来てないから負けてるように見えるんだよね。それにもし仕杖が打太刀と同じリズムで構えをとったとしても、それでもあんまり勝ってるように見えないんだよ、ダンスしてるみたいで。
単独動作の基本がどれだけ大事かというのが、ここにあると思うんだ。用意の号令でサッと構えることができる人と、できない人。いかに瞬時に正しい構えをとれるか?実際に打ち込んだりする部分も大事だけど、それ以上にパッパと構えができるのかどうかの方が重要な気がします。そして、負けない構え。力強い隙のない構えをどうとるか?大竹先生と安丸先生からは以前、構えで負けないように指導をして頂いたことをよく覚えています。
落ち着きのある先生方の演武は、よく見ると止まってる時間の方が動いている時間よりも長い。チャッチャとやって、スッと構えてじーっと待つ。その間ずーっと打太刀見てるんだよね。見切りが大事って言うし、しっかり切られなさいって言われるでしょう。講習会の前にこのことばかり考えていたので、杖道の後の先の意味について、通訳を担当させてもらえたことでさらに興味を持って勉強出来ました。先生方が汗をかかない謎も、きっと関係あるのでしょう。
動かない杖道が、私の目指す杖道だ!ということで、これから一年のテーマは不動心にしようと思います。不動心について沢庵和尚が書いたとされる書物にこうあります。
“向ふへも左へも右へも、十方八方へ心は動き度きやうに動きながら、卒度も止まらぬ心を不動智と申し候(心が一つの物事に捉われれば体が不自由となる。迷えばわずかながらでも心身が止まる。)”
また、Amazonにある剣道手拭いの説明欄にはこうあります。
《不動心》 心の置き場所はまことに難しく相手の動きをじっと見て、そこに心をとどめず、また心を転じて、転じたる所に少しも心の残らぬよう、一所に心を残さず相手の動きに惑わされないことである。
つまり、たとえ形稽古であっても次の動作を考え過ぎてはいけない。それでは打太刀が予想外の動きをしてきた時に対応出来なくなる。常に心を柔軟にしておくことで、相手の動きに即座に対応出来ることが大事である。
大会でも、例えば引落打の構えが繰り付け/打ち込み/体当たり/繰り放し/相打ちで全然違う構えをとる人がよく居ました。次の動作を考えず、正しい引落打の構えを毎回とれるように、稽古したいと思います。
不動心
15/09/2017 投稿者: yukishima
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