Feeds:
投稿
コメント

水月の三角形

仮想敵を相手にした一人稽古では、スリッパ置いて打太刀がここに立ってる!とかやりながら一人二役でやっていたこともありますが、水月で一番気になるのは正しく水月を突いているか?という問題。タイミングは以前に独自研究しましたが、今回は実際の水月への突きのパワーです。一人稽古をする際に、何か目印になるものがあるに違いない。

一番強いのはどの形?という小学生の自由研究課題にある答えは三角形です。三角形は力が加わっても変形しにくい性質がある。

打太刀の居ない空間を突くのは結構難しい感じがしますが、そこは居合道で養った想像力をフルに使い補いましょう。突いた姿勢だけど、杖の角度はだいたい想像できるはず。そこから考えられる一番強い三角形はおそらく右だろう。あまり意識しないと左になりやすい。一番強いであろう三角形の場合はヘソが杖先(打太刀の水月)を向いているはず。

やっぱり実際に打太刀に突いてみないと分からないが、この二等辺三角形を楔だと見れば、楔の力=加えた力 ✖️(斜面の長さ➗頭の長さ)が成り立つので、楔の角度が狭くなるほど、楔の出す力は大きくなるのが理解できる。私の場合には下のようになる。

突きの威力 = 加えた力 x (杖128cm/腰34cm)

ということは、例えば10の力で突くと単純計算で37.6の威力が出るはずである。しかし左のような直角三角形の楔になると楔の力は加えた力のみ伝わるはずだから、10で突いても10のままなのではないか?感覚的には左の方が腕力を目一杯使って、頑張って突いた気持ちになれるけれど、しっかり鞘引き(?)して杖の加速度を増し、左腰を入れて楔の形を作った方が遥かに効果的な突きを生み出せる、はず。

以上のことから、仮想敵を突いた時に、自分の腰が杖に対して直角になっている場合は失敗しており、杖先にヘソがしっかり向いている場合は良い感じなのではないだろうか?

物見の悪い癖

数年前の欧州選手権のブログ記事では、四段での物見について研究しました。私は誰一人として正しく演武できていたとは思えませんでした。まず杖の取り方です。教本ではつま先を開きながら半歩退くとありますが、チェックした動画では私とアダム以外はやってなかった。バリエーションは大きく分けて3通りです。緑のXは杖を取った時の頭の位置です。想像で描いたので完璧ではありませんが、だいたいこんな感じだと思います。

おそらく④が理想的な形になるのではないでしょうか?教本には図解がないので、これも私の想像です。

しかし、たとえ左足の置く場所が正しくても、次の右足の位置やタイミング、杖の軌道や両手の使い方で失敗します。私の場合はというと、特に振りかぶる時に正面から見て腰がの字に曲がる問題がありました。これについてずっと考えていましたが、最近の一人稽古でやっと分かりました。元々①のように間違った方法でやっていたのを、④に変えようとしたにも関わらず、頭の位置を頑固に動かさなかったため、⑤のように重心が右足の上に残ってしまい、結果的に下手したら木剣で肩を叩かれることもあるくらい危なかった。このことから、④のようにしっかりと頭の位置を両足の間にキープすることで、正面から見るとほとんど動いていないように見えるけど、上から見ると間合いが実は少し変わり、ギリギリで切られないようにする体捌きが可能になるみたいな、そんなことがあるのではないだろうか。おそらく頭一つ分くらい後ろに引いているんじゃないのかな?どうなんだろうか?

居合ではよく「本当にそれで切れるのか?」と言われましたが、杖での稽古でも「本当にそれで切られないのか?」と考えながら体捌きについてもう少し、足の位置だけじゃなくて、他の部分でどうなっているのか勉強したいと思います。

先週のまとめ Summary

注意:これは個人的な勉強のまとめノートで、聞き間違いや勘違いが多々あります。(Warning: These are my personal study notes so please don’t take it seriously. Most of them are probably wrong. I gave up translating half way too.)

<br>

刃波について Hanami

<br>

今回詳しく教えて頂いた刃波は、以前にも総切りの一文字で教わったことがあったが、これは袈裟でも同様であるという話であった。刃筋と刃波の使い分けである。それが一番良く切れる。私はこの説明を受けながら、引落打と非常に似ていると感じたのであった。

<br>

I’ve actually been taught about Hanami years ago when he was explaining how to cut Sogiri’s horizontal cut and how otherwise the Kissaki will go up during the cut and stop mid way. What I discovered last week was basically it’s the same in Kesa cuts, and how to choose Hasuji and Hanami in various cuts. I found this very curious especially when I was watching the angles and how similar it was to Hikiotoshi strike.

<br>

左貫での本手打 Honteuchi in Sakan

<br>

最近キマらなくなった原因は大いに構えにある。それは以前のブログ記事で調べたように左手が体から離れすぎていたり、また今回の調査では右手の位置が耳から離れすぎているのも原因になりえることが判明した。右手の位置が離れると、太刀に当たる杖の進入角度も大きくなる。ある角度を超えると滑らずに当たってしまうようである。構えを大きく取ろうとすると、左手は体から離れ、右手は肩よりも少し右にズレてしまう。自分の中で「前から見ても横から見ても45度」というのを、どこかで勘違いして意識してしまったのかもしれない。昨年は後の先を考え、構えを素早くとることを重視して稽古していたが、早くても構えが完璧でなければ意味がない。

<br>

My Honte strike in Sakan is in a slump for sometimes but the reason was the Kamae as you might have read in my previous blog post. I figured it out by watching my video repeatedly over and over again, and the problem was where my left hand positioned.

I also found another reason last week and it was where my right hand positioned. The angle of Jo coming down to hit Tachi is made when you take the Kamae. And closer to your ear is sharper the angle it becomes. It seems to me that there is a point when Jo stops sliding but start hitting if I positioned my right hand toward my elbow in Kamae. The main reason why this kept happening to me was that I wanted to take this Kamae large and quickly, and my hand positions become incorrect. Making Kamae quickly, emphasising Go no Sen in Jodo was one of my main focus points last year, but it doesn’t mean anything if the Kamae were wrong. Even 5cm will make huge differences in the results.

<br>

ちなみに、左貫と乱留には「杖八相の構え」とは書いていない。「杖八相の構え」が登場するのは正眼と乱合であり、打太刀の水月を打つときのみである。つまり太刀を打ち落とす時は肩の上、水月を打つ時は耳上であり、そこに違いが明確にあるということだ。なんとなく似ている八相の構えだと思って、なんとなく打っていてはいけない。しかし、なぜだ?次の道場稽古でそれぞれ打ち比べてみてみる必要がありそうだ。特に水月を打つ時に横殴りになりやすい人は、絶対に杖八相の構えを取っていないが、横殴りではなぜダメなのか?相手が女性の場合は胸があるので横からの方が安全だとは思うけれど、相手が男の場合ならば上から体重を乗せた打ち込みの方がズシンと打てるからだろうか?実際にほとんど力を入れなくても、逆にそっちの方が痛いという感想をしばしば頂く。

<br>

Actually, there isn’t Jo-Hasso in Sakan nor Midaredome. Jo-Hasso only appears in Seigan and Ranai when we strike Uchidachi’s Suigetsu. Therefore, the right hand is positioned above shoulder to strike Tachi and, above ear to strike Suigetsu. There are clear differences between these techniques and we must not get mixed up. But why? I must experiment these strikes and see if it makes any differences when I’m at dojo next time. Especially people who have a habit of hitting Suigetsu side way are not taking Kamae correctly, but why side way isn’t good? I think it’s safer if the Uchidachi was female to strike from side but is it because your strike become heavier if you hit from above with your body weight? I haven’t experienced my own strike but, often relaxed and hit from above seems effective?

<br>

実験結果 Result

<br>

太刀を打ち落とす際での肩上と耳上での違いは、耳上の方が滑りずらかったような印象はある。肩上と腕と肘の間くらいだと、場合によってはそんなに変化はなかったが、一番大事なのは支点となる左手を下げないことだった。逆に、水月を打つ際での違いは結構あるような感じがした。これは切り下ろしのようなイメージがある。

<br>

Strike Tachi down: Above ear position wasn’t sliding as nice as above shoulder position. I didn’t find major differences between “above shoulder” and “above arm (between shoulder and elbow)” but, the most important thing in this strike is that your left hand must not drop.

Strike Suigetsu: This, I found quite different. This is my personal opinion but, it’s more painful if you strike like Kirioroshi cut.

<br>

コツ Tip

<br>

逆手打で「拳を切先にぶつけるような気持ちで」というのを以前教わりましたが、引落打でも同じ助言を頂きました。手を当てにいくと言われるのは、つまり手を「出来るだけ最後まで滑らせないようにする」ということに繋がるのであろう。理想的な杖と太刀が接触する瞬間を分解して見せてもらったことがあったが、納得ができる。しかし、特に新しい助言ではない。初心者の頃から手幅が狭すぎると何回も言われてきた。

<br>

I’ve been given an advice for Gyakute that “try hitting your rear hand to Kissaki” when I visited in Japan. And I’ve been given the same advice for Hikiotoshi too. I believe it means “not to slide your hand too much before Jo meet Tachi” which I’m sure many people have been told by teachers. It’s nothing new but we still can’t fix it, right? Many already finished sliding when hit Tachi or, slide too much and ended up less than ¼ of Jo.

<br>

この時に滑らせるのは小指だと教わった。居合でも同様に柄を握る手の締め方は左小指他二本、右小指とたなごころというような感じであった。小指を使うと腕の裏が伸びる。こうすると前傾しないで打つことができるようになるのであろう。さらに人差し指側で滑ると、腕が曲がりやすく肩も上がり、さらに滑るタイミングも早くなりやすく、滑り過ぎることも多い。こうなるとコントロールが出来なくなる。

<br>

Sliding with little finger is the key. There was also a talk about how to hold Tsuka at Iaido too. Study how muscles and bones work together and make sure to drop shoulders etc… Personally I found that I’d lose control of technique, lean forward, shoulders come up and slide my hand too early in both Gyakute and Hikiotoshi if I use index finger. Very fascinating. You could fix everything by simply slide with little finger.

<br>

肩の力を抜く Shoulders down

<br>

剣道を未経験の私は素振りを沢山したことがない。居合で素振りを今回しましたが、苦手です。先生方からは動きが固くて、リラックスしなさいということを以前からもアドバイスを頂いていました。それでも、そう簡単に克服出来てはいませんでした。今回改めて気付かされたのは肘の使い方です。「肘を柔らかく使いなさい」というのは、思い出せば杖道でも以前アドバイスを頂いたことがあります。でも意味が分かっていたか?となると、そうでもないでしょう。その後に何度も言われた肩や肩甲骨のお話ですが、杖道で研究中の『姿勢』と繋がります。良い姿勢というより、悪い姿勢の方が簡単に説明できます。猫背で、肩が上がっていて、柄頭や杖尾が下や前に出過ぎていて、前のめりのような感じです。

<br>

I’ve never done Kendo, and Suburi isn’t my favorite exercise. Many Sensei told me to relax but it’s not very easy to do. One of the most fascinating points last week was about how to use elbows. I can remember being told the same advice in Jodo training. Although I wasn’t fully understood what it meant at the time. I’m currently studying postures in Jodo, and I believe these elbows and shoulders are the keys. It’s easier to explain bad posture: shoulders up, leaning forward, curved spine and hands too low or far from the Hakama knots.

<br>

鏡の前で正しい姿勢を作るのは、ちょっと頑張れば誰にでもできる。しかし、打ち終わりや切り終わった時に毎回この姿勢を作れるか?というのが一番大事だ。

<br>

Everyone can correct postures in front of mirror. However, there is no point if you couldn’t make this posture every time you cut and strike. I often hear these advice;

「強く握らないこと」 don’t grip hard
「リラックスしなさい」relax
「肘を柔らかく使いなさい」use elbow softly
「肩を上げない」don’t rise shoulders
「肩甲骨を寄せて」tighten shoulder blades
「首筋を伸ばして」extend your neck
「膕を伸ばして」extend behind knees
「左手は拳一つほど前」left hand 1 fist away

なんてことを(少なくとも私は)よく言われると思います。これは結局、刀や杖を振りかぶる時に手を意識して使うとなぜか一緒に肩も上がって力んでしまい、ついでに手で握ってしまって動きが遅くなってしまう。逆に肘を意識して見ると肩が上がらず、手の内も柔らかく、意外と早く振りかぶることが出来る。合気道の動画を見ていると、合気上げと少し似ているなと思いました。

<br>

Basically I’m doing opposite here. Grip hard, tighten elbow, rise shoulders etc… and what happens? Very slow Furikaburi and weak cut/strike. The finish postures are also very weak. The fact that if you use elbow to Furikaburi, shoulder doesn’t move and you can keep Tenouchi soft and, Furikaburi become very fast. I found this very similar to Aikido’s technique.

<br>

姿勢 Posture

<br>

構えと打ち終わった(切り終わった)姿勢が正しくなければ、おそらく技は失敗している。以上のことから考えられるのは、つまり小指と肘を意識して稽古を続ければ姿勢が正しくなり、正しい技に繋がることだ。武道を始めた初日から言われていたことである。知っているのと理解しているのは違う。

<br>

If Kamae and the end of cut/strike postures were incorrect, most likely the technique didn’t work. None of the above are new. I’ve been given these advice from day 1. However, knowing and understanding are different.

<br>

太刀を打ち落とす

<br>

左貫では右手の位置が肩上であった。太刀を打ち落とすにはこの角度が良いのだろう。実際に杖を自然に振り下ろしても気持ちよく滑る。そうならば引落打で打ち落とす時も、やはり肩上を通った方が良いのではないだろうか?構えから肩上を通り、太刀の切先から杖が当たるように線を結べば、自ずと通るべき杖筋は見えてくるのではないか?それぞれの体格や打太刀との間合いを計算すれば、理想的な打ち方がイメージしやすくなるのではないだろうか。

<br>

打太刀に対して

<br>

打太刀に杖の長さを見せないこと。線ではなく点で攻めること。死角から攻めること。これらは非常に大事だと教わった。実際に稽古をしていても、速いのはそんなに怖くないけど、見えないのが怖い。ゆっくりでも大きく杖を回してくると間合いが分からなくなって、とても難しい。杖筋を通すことや、杖を大きく回して死角から攻めることなどを考慮すると、やはり身幅で振ることや肘の位置が非常に気になってくる。肘が外に出てくるということは、体を捻るタイミングが早い、つまり手が余計に滑ってしまっていて円が小さく、そして杖筋が狂っているということになる。私はなんとなく背泳ぎでの腕の動きに似ていると思う。杖の動きを邪魔しない肩関節の使い方というのは、水泳でも勉強できる気がする。来年の春の杖合宿は稽古の後にクロールじゃなくて背泳ぎにしよう。

<br>

側転

<br>

大きく回すということに関して、私は側転が苦手なのだけれど、それは私が間違ったアプローチをしていたからだと、体操教室で子供達の練習を見て思い知った。側転というのは横向きでスタートするのではなく、どちらかというと逆立ちをするような感じなのだ。つまり手を置く位置が結構近い。こうすることで足がしっかりと上がるのだが、引落打でも同じように前手をどんどん前に進ませて脇を開けてしまうと杖先が上がってこない。下手くそな側転のようになる。自分が杖になったつもりで、側転をやってみるとどうやって足に力が伝わっていくか感じられるかもしれない。

<br>

足の位置

<br>

真半身で後ろ足が一直線上になってしまう癖は、きっと皆んなにもよくある。居合でも袈裟斬りだとか、受け流しだとか、切り終わった時にバランスが悪い時があるだろう。私はある。特に受け流しと物見は似ている。やや半身で突いてから真半身で引落打の構えをとるときも、なかなか後ろ足が正しい所に置けない。これは攻めの感覚の問題だと気付かされた。逃げながら切ってはいけないと言われた。きっとここにヒントがあるのだろう。

<br>

骨盤

<br>

鏡を見ながら打ち込んだり、切り下ろしすると分かる。先生方との違いは骨盤の位置や傾斜角度だ。膕を伸ばそうとしても何故か曲がったように見えてしまう場合も、おそらく骨盤の位置がおかしい。極端に言えば前に出過ぎていることが多い。これは踏み込んで斬り下ろす場合などで、突っ込み過ぎなのかもしれない。引き切りというのも、もう少し強くイメージして稽古するべきなのだろう。とにかく、毎回正しい姿勢で技を使えるようにしなければ、理想の技を再現するのは不可能だ。ヒントはきっとすぐ側にあると思うんだけどな。

<br>

簡単は難しい

「居合道は相手が見えないから難しいけど、杖道は相手が居るから簡単。」でも裏を返せば、「杖道は相手が居るから難しいけど、居合道は相手が見えないから簡単。」であるというのを、今回の夏講習会では改めて考える機会を持ちました。居合道も杖道も同じ形武道であり、制定形では教本に忠実に稽古と演武をします。

「居合道も杖道も同じだよ。」と稽古を始めた頃に先生から聞いたことがありますが、その頃は手の内だとか姿勢なんかが似ているのかな?と思っていました。

私は圧倒的に杖道を一人稽古している時間の方が長いです。そう考えると居合と同じように仮想敵をイメージしながら稽古しているのと全く同じです。居合道では仮想敵をイメージするのが難しいと感じることが多い気がしますが、杖道を稽古するとその切りおろしの速さだとか、打太刀との気持ちの繋がりなどが体感できて勉強になります。居合道を杖道のために稽古している私にとってはやはり、杖道もその逆で、居合道から学ぶことは沢山あると思います。

しかし、一人稽古の時に居合道と同じような稽古をしているだろうか?杖道では敵は一人しか居ませんので、居合道のように想定している仮想敵が前後に3人というのはありませんが、背後や周囲から無防備ではないだろうか?構えた時の攻めの出し方だとか、切り終わった後の残心、最初に踏み出す一歩はどうだ?目付は?杖筋は通っているか?姿勢は?

一人稽古をするときは、もう少し居合道のような着眼点や重要着眼点などを考えながら、もし杖道形を居合形のように一人で演武するのであったら、仮想敵をしっかりと表現して目の前に浮かび上がらせることが出来るのか?「しっかりと目で敵を捕らえるのが大事だよ。」と仰った先生の一言を思い出して一人稽古を続けようと思います。

引落打は以前より随分太刀を「滑る」ようになりました。百発百中ではありませんし、グワッと威力のある打ち込みにはなれていませんが、五割くらいの確率ではないでしょうか。少しずつ成長してきたと実感できてきました。もう何年間1人で、たまに2人で(ほぼ友人全員に飽きられるまで)勉強してきたか分かりませんが、全く勉強していない人は私がスタートした時から昇段しても技に特に変化もないので、やっぱり技は自分で磨くしかないんだなと感じました。八段の先生の技は八段に合格したら勝手に身に付くみたいな、レベルアップしたら新しい魔法が使えるという錯覚をしている人も居るのかもしれません。あるいは中段者では高段者の技は再現できないと最初から諦めているのかもしれない。

67911932_10157194545270995_802371737105727488_n

居合道講習会で刃筋や刃波の勉強をした時に「引落と同じじゃないか!?」と1人でワクワクしながら、楽しい講習会を1週間過ごさせて頂きました。そして小指の使い方は、杖道講習会でも居合道講習会でも沢山勉強しました。だんだんと先生方からのアドバイスへの理解が深まるにつれ、技というのは力技ではなく、姿勢からくるのだというのを改めて考えさせられました。面白い。本当に面白い。

67763400_10157194164910995_3932919780788404224_n

通訳を担当させてもらい、非常に充実した講習会を過ごすことができました。通訳するためには先生の指導をしっかりと理解する必要があり、何回も頭の中で考えているうちに忘れられなくなります。沢山の人を指導する先生と付きっきりになることで、他人の癖がよく分かり、自分も同じ間違いをしているのだと勉強になります。

疑問と仮説

前回の左貫本手打から学んだことは一体なんだ?というと、正しい構えの重要性である。ブログで研究したように、少し違うだけで全く異なる結果になったことが衝撃的であった。
 

 
おしまい
 
 
___で終わってしまうと勿体無い。これを応用して他の技(私にとってつまり引落打であるが)の理解を深めることが出来るはずだ。全ての道は引落打に通じるのである。
 

Dec 2016


 
具体的な違いは、杖筋が通った左の動画では、構えた左手の位置が水月の1拳前であるのに対して、右の動画は胸の2〜3拳前にあることだった。杖道では、打つときに手を滑らせるのが特徴である。
 

 
色々な人を観察していると、打ち方にパターンがあるのに気付く。顔面を打つ引落打の場合、手首をスナップさせて打つ人は右手が支点になっていて、杖先を移動させるのを、例えばボート漕ぎのようなテコを利用している。最後まで杖先が前に出てこないのが特徴だ。
 

 
このような打ち方は、左貫本手打のような場面では失敗しやすい。
 
何故なら杖先を下に動かすためには、杖尾を上に動かさなければならないからだ。打ち終わりに杖尾を抱きかかえたり、窮屈な姿勢になっている場合は、正しい間合いに引いていないか、もしくは打ち方に問題がある可能性があるのではないだろうかと、私は思う。さらに前回のブログで紹介したように、構えた時の手の位置が高い場合でも、一度下に移動させてから上げることになるため、直線を描きにくい。これは引落打でも頻繁に起きる現象で、打ち終わりに体が浮き上がるのが特徴だ。
 

March 2015


 
杖道は単独動作から学び、一番最初に習うのは本手打だ。準備の姿勢から前の手の位置を上下させないで、後ろから大きく回して打つように指導されたのを覚えている。杖先を走らせて、体から先に突っ込まないように注意されたことがある。支点を固定させて、手を滑らせて打ち込む大切さを学ぶのだろう。
 
二番目は逆手打だ。打ち損じる場合は前の手を手前に引いたり、下げたりする場合がほとんどである。本手打と同じように支点を固定することが大事であり、さらに腰をしっかり入れることを注意される。
 
そして三番目の引落打。準備の姿勢が大きく異なり、真半身からやや半身で打つことになるが、先の基本2本からの応用であると考えれば理解しやすい(はずだ)。
 
支点を固定させること
手を滑らせること
腰を入れること
 
まず最初の疑問は支点が一体どこなのか?ということだ。本手と逆手と違い、杖尾は胸にある。これは一体どういう意味なのだろうか?なぜこんな構えにくい所に手を置く必要があるのだろうか?
 
逆手打で打ち落す場合は『合わせ』から始まるが、一番最初に感じるのは『間合いが遠い』ということだ。これと比べると引落打は『間合いが近い』だろう。左貫での本手打ではというと、これは引落打と同じくらいじゃないかと、私は思う。しかし右足が前でさらに正対していることから、打ちやすいと感じるはずだ。引落打のように真半身なっていると難しく感じる。
 

腰が十分に入らないと前傾しやすい


 
下のイラストは私の計測した結果なので、これが本当に正確なのか自信がないけれど、逆手打と比べて引落打は、おおよそ切先に体一つ分前にあるようだ。
 

 
多分私だけじゃないと思うんだが、イラストを見ていると凄く気になることがあるだろう?そう、「逆手打用意での前手の位置と、引落打用意の前手の位置は、果たして同じなのか?」である。
 

 
私の計測ではほぼ同じなのだ…
 

 
次回に続く!

錆落とし

数ヶ月前から、なぜか得意だった左貫の本手打が下手くそになった。杖が滑らずに叩く格好になってしまっている。形の演武の時だけ発生するので、非常に不思議だったのだが、昨夜撮影したら原因が分かった気がする。変なスランプはすぐに脱出したい。
 
まず比較のスロー動画を貼ってみよう。
 

 
この時はとりあえず杖が滑る感触だけをチェックしていたので、腰が入っていないのは見逃してもらいたい。まず最初に気がつくのは構えが違うこと。形では左手の位置が上がってしまっていて水月の前じゃ無い。そのせいで打ちおろす際に窮屈になり、結果的に左手が下がる動作が加わってしまうようだ。
 

 
支点となる左手が動くということは、それだけ杖先が描く起動がブレやすいということだから、刃筋は通らなくなっているのだろう。そして、顔面に杖先を素早く持っていくことばかり考えていると、私の「杖先を正中線に戻してしまう」癖が出てきやすくなり刃筋がカーブしているのが分かる。
 

構えが違う


 

正中線に戻してから上げる癖がある


 
次は少し姿勢を低くして打ってみた時の比較動画。こっちのほうが気持ちよく滑ったけど、姿勢というよりも、刃筋がもっと真っ直ぐだったのが原因のようだ。
 

 
スッキリしました。
 

雷打編

引落打は少し期間が空いてしまったのか、また振り出しに戻ってしまって、杖合宿の時のように打てない日が続いているので、気分転換も兼ねて、全英大会後日に開催された杖道錬成会で取り組んだ雷打について、指導された部分を研究していきたいと思う。私は次の稽古までに、注意された点は改善させておきたい。
 
特にこの形は三段以上になると、大会や審査でもよく出てくる制定杖道の形でもあるし、古流中段にある形で非常に難しい。苦手はさっさと克服していきたい。
 
私がよくチェックしている部分が以下

  1. 構えが変
  2. 突くときに杖先が下がってから上がる
  3. 突いたときに仕杖の頭が上がる/背が伸びる
  4. 突いたときに押し返される
  5. 突いたときに右手を滑らせていない
  6. 水月を突いていない
  7. 杖が横回転しながら次の突きの準備をする
  8. 突きが横から来る
  9. 突きに気杖体の一致がない
  10. 突いたときに真半身じゃない
  11. 突いたときに後ろ足が開きすぎている
  12. 突いたときに肘が杖の下にない
  13. 突いたときに杖の線と両肩、両肘、両足が同じ線上にない
  14. 突いたときに杖が打太刀の肘を止めていない
  15. 脾腹を突いていない
  16. 突いたときに打太刀を見ていない
  17. 杖を顔面につけたときに下半身がまだ真半身になってる
  18. 杖を顔面につけるときに杖先がフラフラする

私が一番研究したいのは気杖体の一致、そして錬成会で課題を出されたのが真半身の部分だ。自分を含めて色んな人の動きを注視していると突きには二種類あることに気付く。一つは前足が着地する瞬間に杖先を脾腹に突く人達。もう一つは後ろ足が着地する瞬間に杖先を脾腹に突く人達だ。どちらが正しいのかは知らない。だからここに書いてあるのは私の個人的な感想です。
 
雷打は非常に速い形なので、とても見えにくい部分だけど、スロー動画だと二つの違いがよく分かる。前者は突くのが素早く、見栄えも良い感じがするが、突き終わってからも動いているので良く観察すると違いがはっきり見えてくる。後者は前足が着地してもまだ狙っているか、前足が着地した時に突き始めるので、突くタイミングが一瞬遅い。私は下の動画で見ると後者に近いと思う。若干後ろ足の着地が遅いので、後ろ足の踏ん張りが効いていないようだ。突いた瞬間と両足が着地した瞬間の比較画像を下に紹介する。
 

後ろ足の着地が一瞬遅い?


 
やはり先生方の演武を拝見していると、動きに無駄がなく、そこから気品/気位/気勢、タメやキメが生まれてくるのだとも考えられるから、突いてからもまだ動いているというのは、間違ってるのかどうかは知らないけど、格好は良くないと思う。
 
突いてからまだ体が動いているのは、下半身を使っていないのだから、やはり腕力に頼って突くことになるだろうし、打太刀が強いと押し返されることが多いので、気杖体の一致を考えれば理想的ではない気がする。私はこの部分は今まで通り、後ろ足着地と同時に突きが決まるイメージで稽古していこうと思う。間違えていればまた先生から修正するように指導を受けるだけだ。下の動画は錬成会で修正をする前に自分の問題点を確認するために撮影したものです。今まではこんな感じでやっていました。稽古後は改善されていると思いますが、まだ突く準備が遅いし、もう少し後の先で動けそうだし、姿勢に関して未完成である。
 

 
突いてからも動き続けて、杖の下に移動して体の修正が出来る人と比べて、後ろ足の着地と同時に突きをキメる場合は、一発勝負になるので、真半身が一瞬で完成しないとタイミングが良くても、突いたときの姿勢が変である場合があり、それが私の今回の錬成会で課題になった一つである。どうも真半身になりきれていないようである。各自修正しながら、原因を探ったり、体にその姿勢を覚えさせようと頑張りました。
 
特に後ろ足の湧泉で蹴って突こうとすると、体は自然と打太刀に向こうとねじれを生み出し、両肘が外に張ってくる。したがって、突くときは足裏全体をしっかり使って行う方が、体を真半身に保つのに有効だと、この時に考えたのだが、自宅で稽古をやっていると、もっと簡単で重大な原因が見えてきた。
 
雷打では、真半身から真半身へと転身をするのだが、意識しないと180度しか回らず、杖と下半身が打太刀に対して斜めに構えると、下のイラストの右のようになり、両肘が外に張って、何だか上半身だけやや半身のような姿勢になってしまう。杖と両肩と両足のラインが同じ線上になく、ねじれており強くない。気持ちは200度くらい回る方が、正しい姿勢で突けることが可能になるのではないだろうか?
 

緑=杖、紫=上腕


 
杖道は面白い。出来たと思っても全く出来てない。速さで誤魔化したり、事理一致してなかったり、技が効いていなかったりする。特に最近は怪我をすることも多くなって、昔のように力任せに動くと関節が悲鳴を上げるようになってきた。体に無理のない動きを追い求めていきたい。朝起きたらどこか痛いとか、ストレッチしたら関節が壊れるとか、最近多すぎる。
 

打突の好機

初心者と私の共通点はいつどこを打っているのか?が曖昧であるということだ。合宿中に沢山の初心者の打太刀をやって気付いたこと、自分の打ち方を調整して理解を深めたこと、そして講話で学んだことを改めて整理してみた。
 
もちろん最初から出来ている人は居るんだろうけど、多くの初心者は太刀に当てることに集中するため、思い切り太刀を叩き払うか、当たった後に押し込むという、大きく分けて2パターンに別れる。私の昔の動画を振り返ってみたい。これは叩いてから押し込む動作をしている。
 

2015年9月


 
このように、体が開くタイミングが早い場合、一体何が起きているかというと、杖が太刀に当たる瞬間に前足を固定して叩いている。当たった後は、後ろ足をさらに捻って前傾し、腰を回して押し出そうとしているのが分かる。つまり、当たったときにはもう打ち終わっていて、その後はおまけだ。技も非常に小さい。
 
このようにして打つと、打太刀は太刀を叩かれたような感触を持つのだが、タメを使って打つ場合、そのタメを解放するために前足を、当たる瞬間よりも早いタイミングで固定しなければならないというのも、忘れてはいけない。動きを一回止めてから打つというのは、見かけによらず結構弱い。
 
これが杖が後ろから遅れてやってくる一番大きな原因だ。タメを使って打つのが何故駄目なのか?というのは、(私が今まで散々悩んだように)あんまり難しく考えなくても、先生方の引落打を受ければ答えがすぐに分かる。それはもっと楽で強く打てる方法があるからだ。力技の場合は、ある程度筋トレで威力が伸びる可能性があっても、加齢とともに弱くなるのは明らかだ。どうせなら仙人のように老いても強く居たいし、明日は今日よりも上達していて欲しい。死ぬ直前が自分にとってベストでありたい。筋トレはあくまで健康維持のためだ。武道なんだから、テクニックを学ぼう!
 
例えば思い切りサンドバッグを叩くのは、ストレス発散で気持ちがいいかもしれないが、正しいテクニックを学ばないと手首などを怪我するし、見かけだけで、強いパンチにならないだろう。理合だってボクシングと同じだ。大きく振りかぶって殴り掛かっても、避けられたら意味がない。パンチが出る前に顔を出しても危ない。杖道の打太刀はサンドバッグではないし、持ってるのも木の棒ではなく、人が日本刀を持っているのを忘れてはいけない。
 
仕杖の意識が太刀に移った時、それが打太刀にとっての打突の好機である。剣道はやったことないけど、きっと相手の竹刀を打とうとすると、逆に自分が打たれて負けるだろう。「太刀を見て打たないように」とアドバイスされたのは、何度もある。
 
では、一体どのタイミングで前足が固定されるのが最適なのか?気杖体の一致を考えれば、手の内を使う瞬間だろうというのは簡単に想像出来る。じゃあ、いつ手の内を使うのか?太刀を叩く目標にするのでなければ、何をターゲットにして打つのか?
 
私が思うには、遠心力などを使い、杖先の力が最大になるように打つのだから、杖と太刀が最初に接触するタイミング、つまり太刀の切先や物打付近で力比べするのは、仕杖にとって不利なはずだ。なぜなら太刀の切先に力がある打太刀に対して、仕杖は力の入っていない杖の手元付近で勝負しなければならないからである。かなりの力技にならざるをえない。そしてこれは「力は手元ではなく、切先/杖先に」という教えに反する。こうなると自然と杖先の力は軽減されてしまうだろう。悪い影響が出る。
 
したがって解決すべき問題は、どのようにして太刀の強い切先部分を、杖先に力を温存させたまま、仕杖にとって弱い手元付近で負かすか?である。
 
以前のブログ記事で散々研究したので、その方法は省略するが、タイミングで考えれば、一番強い杖先が太刀に接触する瞬間が、仕杖にとって勝負の時であるはずだと思う。それはきっと杖が太刀を離れる間際であり、イメージしているのより随分後だ。腰を回すタイミングが早いというのも何度もアドバイスされたが、結局全てのアドバイスは表現の違いがあるだけで、同じことを言っているのだろう。
 
太刀を見ないというのには2つ意味があると思う。1つは太刀を叩く目標にしないということ。目標が近過ぎて窮屈な小さい円になりやすく、手の内を効かせるタイミングが早くなってしまって、力技になりやすい。もう1つは太刀に意識を移すことで、打太刀に打突の好機を与えてしまい、技が成り立たなくなること。常に打太刀を攻める気持ちを持つことで、正しい理合で打ち込むことが出来、杖を大きく回し、遠心力を使って技を最大に使えるだろう。そして、結果的に自然と正しいタイミングで手の内が使えるようになる(はず)。
 
講話で「打突の好機」について学んだので、自分なりにそれを考えてみました。今週末は古流の稽古会、来週末は全英大会です。例年なら6月中旬なんだけど、今年の大会が早いのは何故…
 

引落打FX

そう、やはり小さな力を大きくするにはレバレッジ(テコの原理)をかけるしかない!そんな再確認をした週末でした。
 
上田先生との杖合宿は、毎年春に妙剣道場が主催します。実はこの道場がある街は、私が4年通った芸大の隣街にあるんですが、あの頃は全く武道に興味も無く、ピーター先生に出会うこともなかったのでした。しかしながら不思議なご縁を感じています。
 

 
杖合宿は講習会ではありません。皆で仲良く一緒に稽古しましょうということで、40名くらいの参加だったと思いますが、初心に帰って全員で基本の基本を徹底的に稽古しました。海外では殆ど開かれない貴重な講話もあり、非常にためになる2泊3日の旅でした。朝の6時半から午後6時半まで稽古して、タイヨガマッサージの後にプールで30分くらい泳いで、ビール呑んで食べれるだけ食べて、寝る前に全部ノートにまとめて、寝て起きて稽古再開!と本当に楽しかったです。
 
初心に戻って、今までやってきたことを忘れて一から学び直すつもりで、全ての基本技を再構築することにしました。道具の手入れも皆でやって、見違えるような杖と太刀に感動です。
 
2011年の春からもう7年も引落打に没頭し、道場の友達からは「まだ引落打やってるの?他の技も勉強しなさい」とよく言われ、呆れ顔で晩ご飯でもからかわれましたが、その度に全部同じ技だと説明してるんですが、私の説明がヘタクソなのかあまり聞く耳を持たれません。いつか、きっと自分がもっと上手になれば、技を通してそのことを皆に伝えることが出来るのかもしれません。それまではとにかく練習研究あるのみです。
 
全ての技では杖の刃筋となる軌道を邪魔しない身体操作が重要で、これがほぼ同じ仕組みだと思います。人間の骨格の作りを考えれば自然な動きというのが見えてきます。そして、テコの原理。この恐ろしくシンプルなのが杖道の魅力です。
 
12本ある基本技の中で、私が一番難しいと感じるのは引落打です。他の11本は引落打の応用とも言えるし、11本の応用が引落打の1本に全部入っているとも言える気がします。例えば_
 
本手打のように後ろから大きく回し、
逆手打のように前手を固定し、
返し突のように体を捻り(逆再生)、
逆手突のように体を捻り、
巻落のように太刀に乗り、
繰放、繰付、体当のようにテコを使い、
突外打のように杖を振り下ろし、
胴払打のように腰のキレを使い、
体外打のように太刀を打ち落とす。
 
これに加えて杖八相から水月に打ち込む正眼や乱合での、腕力じゃない体重を乗せたテコの感覚の12をまとめると、引落打にレバレッジがかかる_____はず!50倍とか!!やっぱり体重は増やした方が効くのか?
 
もうね、ここまで引落打に没頭すると「全ての道は引落打に通じる」みたいな感じがします。だから基本が全てしっかり出来ていないのに正しい引落打が打てるはずが無いとも思います。
 
一番難しいのは、テコを使う瞬間に水月に打ち込む時は、的が固定されているから簡単だけど、引落打では少し暖簾に腕押しみたいなイメージがあって、少し怖いところです。でも体外打では出来るんだから、気持ちの問題だと思います。私は水月に打ち込む時に、『J』のイメージを持っています。真っ直ぐ振り下ろして、最後の一瞬にやや半身になって杖先の角を手の内でパッとのめり込ませる感じでやると打太刀が「うっ」となります(笑)どのくらい重いのか、さっぱり自分では分からないのが問題ですが、打太刀はいつも予想よりも良いので、まずまずなのではと。
 
しかし、楽に打てば打つほど重くなるようなので、加減が難しくて女性相手に打つのは怖いです。演武でエレナ先生と正眼した時はハラハラしました。手加減しようとすると逆に力が入って的がズレるし、軽く打つのがとても難しい。今は怖いので寸止めで道着スレスレで止めています。太刀だったら思い切り吹っ飛ばしますけど、打太刀の後ろに誰か立っていたら、これもやっぱり躊躇します。昔は男性に対しても突いたり打ったりするのを躊躇していたので、一応成長はしているとは思うんですが、なかなか難しい。先輩や先生に対して失礼のないように、もっとコントロール出来るように稽古したいと思います。
 
とことで、下のダン先輩の引落打スロー動画からも分かるように、太刀に負ける(=杖先が正中線に戻ってくる)ことがあるのは、最後の手の内が失敗しているからなのかもしれません。木刀を軽く握っている人でなければ杖先は100%『し』の軌道になることが多い。私もよくやる問題です。
 

 
<私の個人的な研究観察>
肩を開くタイミングが早いと、手の位置が肩より後ろになってしまい、腕が挙らなくなってしまうので、このように肘が外に出てしまう。手が挙がらないと振り下ろす際に滑る距離が減ってしまう原因にも繋がってしまい、さらに外に張った肘の影響で杖の刃筋が狂ってしまう。あるいは、手幅を大きく保とうとすると左手が下がってしまうことにもなる。丁度全ての◎がバラバラに動き出すとき、仕杖が狙いを定めて打とうとしているのが見て取れます。おそらく横から見ると動きが二拍子に見えるのかもしれません。

三点がバラバラの方向へ移動することで、杖先の力が定まらず太刀に負けたり、右手で打とうとすると左手が下がって太刀の側面から当たって力負けすることも考えられる。打ち終わりで杖先が正中線にある場合は、顔面を攻める時の杖先の移動が下から上というイメージを持っていたり、打ち終わりが本手の構えのような杖の角度(つまり左手が左で、右手は右にあるべき)と思っているからか、もしくは太刀に負けたことで正中線に戻された結果とも考えられる。

大きな円を描けない最大の原因が左肩が動くタイミング、さらに元を辿れば腰、あるいは膝が動き始めるタイミングが早すぎることだと理解出来る。返し突を勉強すると、どのタイミングで肩を動かすのが、杖を縦回転させるのに有効か非常に分かりやすい。
 
じゃあ、正中線に戻ってくるということは、そのタイミングで内側に力がかかるのだから、『J』のように逆方向に手の内が使えれば、『|』になるのかな?早く実験したいけど出来ないのは一人稽古の悩みです。まあ、右引落打ではそんなことしてないから、しないのかもしれないけど。
 

握る引落打

寒稽古でもよく見かけたんだけど、引落の構えで後ろの手が開いている人が多い。あんまり大事じゃないと思っている人が相当数居るのかもしれない。私は先生に「しっかり握りなさい」と教わったので、後輩にもそのまんま「しっかり握りなさい」と注意をするけれど、「なんで?」と訊かれたらどう答えるか悩むと思う。

というわけで、自分なりに色々と考えてみた。というのも、乱合で引落の構えから一歩出て打太刀の顔面を狙うとき、前の手を使う人が非常に多かったからだ。ここにヒントがあったと思う。

教本を読めば、乱合のそれは「杖は右手で斜め下から突き出すように攻める。」と書いてあるように、前の手で殴るようなイメージではない。制定や古流の本を何冊読んで見ても、先生方の前の手は握るどころか指を伸ばしているようなイメージだ。そもそも、引落の構えでは前の手は指を伸ばすのが正しい。次の繰付の動作を考えても、やはり杖を瞬時に持ち挙げるには握っていては効率が悪いとも思う。

では、なぜ皆前の手をそんなに握って攻めたがるのだろうか?

指を伸ばした場合、片手で杖を持つとイラストの左のように杖先が両足の真ん中辺りに落ちる。初心者で多いのが中央のように左手が胸の真ん中にあるパターンだ。もしくは右のイラストのように左手で握って持つ場合もある。どれも正しくないし、右手が機能していないのが分かる。

引落の構えでは、後ろの腕を自然に下ろし杖を持つと勝手に逆さまになった本手になる。そして杖尾は自然と左乳首に位置するのに気付くだろう。そこに前の手を添えれば正しい構えになる。これに気付くのに8年くらいかかった。閃いたのは一瞬でだけど。

したがって、後ろの手がおろそかな場合は、正しい構えが取れておらず、正しい打ち込みは不可能になると考えられる。

追記になるが、寒稽古でもう一つ気付いたことがあった。それは前の手を顔の位置まで挙げると(あくまで私の場合は)成功率が上昇した件についてだ。以前のブログでは、前の手を挙げると失敗に繋がると書いたが、これはそれに改良を加えた打ち方になる。顔まで挙げた手を、そのまま真下に肩の位置まで下ろす。失敗する人は手が前方に流れていく。

昨年秋に試した動画では、大げさにやってみたので前の手は結構挙っており、これに関しては無駄やスキが多過ぎるうえに、物理的な計算上では威力が最大にならないため、先生方のように打てるよう研究を続けていたのだが、挙げると成功しやすくなる理由には決定的な原因が掴めずにいた。

赤=杖筋、青=正中線

逆に言えば肩の位置だと(あくまで私の場合)失敗する確立が上がるのだ。何故だ?

これには形の演武で緊張して失敗してしまうのを、手を挙げてタメを作ることで気持ちを前よりも上に持っていき、一呼吸/一拍子増やすことで焦る気持ちを落ち着かせ、後ろの手をしっかり高く持っていくのが成功率を上げる理由だろうと考えていたが、もう一つあったようだ。それが前の肘の位置だ。

顔の位置まで前の手を挙げてから肩の位置に戻すと、自然と脇が閉まり肘が固定される。これによって振り下しの軌道が定まりやすいようだが、肩の位置に留めると、脇が少し開き気味になりやすく、成功しにくい。たぶん支点を固定するのに大事になるんだろう。このように、ちょっとしたことが失敗に繋がる。

力というのは質量x加速度であり、重力や遠心力を最大限使い、太刀に当たる最適な角度を研究し、加速方向(杖筋)を真っ直ぐにすることでその力を最大にすることが出来るはず。さらにスキの無い打ち込み、打太刀から見えない打ち込みを研究する必要があり、無駄を極限まで無くして最速を追求するのが、先生のような技を習得するために必要なのだと思っている。あんまり進歩していない気はするけれど、杖道は非常に面白い武道だ。

まずは大きく学んで、そこから無駄をどんどん削っていくという空手の動画にはとても共感出来たので、その動画もここに張ろうと思う。